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病院経営 虎の巻

虎の巻その15 病院コストの実態と本質をとらえる(下)

病院経営虎の巻その15 病院コストの実態と本質をとらえる(下)

1.はじめに

前回に引き続き、今回も医業コストについて取り上げます。
キャピタルメディカが実際に手掛けた病院の事例を基に、医業コストの分析および課題抽出の流れを紹介していきます。

コスト構成比(一般病床)

(図1) コスト構成比 「厚生労働省 第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)」より

まずはそれぞれの病院の医業コスト構成比率を把握することからはじめてください。
(図1)は一般病床の大まかなコスト構造を表したもので、[給与費]で6割近くを占めています。次いで[材料費]が続きます。
 

2.医業校正の分析事例

続いてキャピタルメディカが手掛けた事例を見ていきましょう。

 2-①事例 A病院

コスト構成比(A病院)

(図2)A病院のコスト構成比

 

A病院は60床の整形外科専門の病院で、(図2)がA病院のコスト構成比になります。
人件費は52%と(図①)の全国平均56%を下回っています。これは看護補助者の夜間配置を見直したことにより実現しました。

以前は夜勤2名を配置していましたが、患者の重症度や夜間業務量調査を行った結果、自立度の高い患者が多い事や、夜間に行っている業務が夜勤の看護師に移行できる業務量であることがわかり、徐々に調整しながら最終的に夜勤配置を行わない事になりました。

続いて[材料費]ですが、こちらは25%と全国平均の22%を上回っています。
平均を上回っているから「即削減してください!」となった訳ではなく、何故上回っているのか要因を探っていきました。

[材料費]は大きく4つの項目があります。

[医薬品費]
投薬用薬品/注射用薬品/検査用試薬/外用薬品 
など

[診療材料費]
カテーテル/縫合糸/酸素/インプラント など

[患者給食材料費]
患者給食のために使用した食品の消費額 など

[医療消耗器具費]
シリンジ/シャーレ/氷枕/鉗子 など

A病院の[材料費]を調べたところ[診療材料費]の比率が非常に高く、なかでも人工骨頭などの医療材料の使用数が多いことがわかりました。
これは整形外科専門病院の特性ともいえ、使用料を削減することは医療サービスの低下につながります。しかも人工骨頭は保険請求での償還が認められている「特定保険医療材料」に含まれていますので使用量すべてがコストになるわけではありませんでした。
それゆえ非償還材料と切り分けて考え[材料費]の実態把握を進めました。

ここまでの分析により、A病院の人件費は人員削減フェーズではなく、適正人員のモニタリングフェーズであり、課題は医療材料の整理でした。

医師及び看護師とのヒアリングを重ね、単に使用量を削減を訴えるのではなく、医療の質を維持しながら卸会社やメーカーの選定から再考する事になりました。
 

 2-②事例 B病院

続いて、地方に位置する100床のケアミックス型のB病院の事例です。
当初は全て療養病棟の編成でしたが、近隣10km以内に病院が無いこと、急性期病院からの紹介が多く常に病床稼働が100%に近いため、回復期リハビリテーション病棟、次いで地域包括ケア病床と複数の機能をもつケアミックス型にシフトした病院です。
 
コスト構成比(B病院)

(図3)B病院のコスト構成比

 
(図3)がB病院のコスト構成比になります。
[給与費]の比率が大きいのがわかります。医療経済実態調査によると、療養病棟における[給与費]の比率は60%前後とされていますので、69%は非常に高い構成比といえます。
更にもうひとつ大きな問題が潜んでいます。

一般的に[給与費]は[固定費]とされ、収入が増えれば人件費比率が減少、収入が減少すれば人件費比率上昇する仕組みになっています。
その仕組から考えるとB病院は病床稼働が100%に近いにも関わらず、人件費比率が高いため健全な経営状態とは言えません。

そこで、要因について分析を試みました。

【要因①】地域の特性

療養病棟専門病院だった当初は、地元採用の職員が多い反面、平均年齢が50歳を超えるという問題を抱えていました。
ケアミックス型への転換に伴う施設基準上の配置人員の補強に加え、プロパー職員の大量リタイアが相次ぎ、予定していた計画以上の人員補充が必要でした。
結果として、地元採用だけでの補充は断念し、期間雇用の契約職員を多く抱えることになってしまいました。

【要因②】採用に関わるコスト

前項に関連して、人材紹介サービスの支払い手数料、採用に関わるホームページや新聞折込など広告料、職員紹介料など、採用に関わるコストも多大に費やす結果となりました。病床再編は実現できましたが、代償は大きいものでした。

これまでの分析により、B病院の課題は[給与費]が高い事による人員削減とも捉えられますが、本質は組織体系のボトムアップや職員教育が挙げられます。

今回は2病院を事例を基に医業コスト分析を紹介してきましたが、病院のデュー・デリジェンス結果を説明した際、自院の実態に驚かれる経営者も少なくはありません。自院の医業コスト構成の特徴を把握し事業計画作成に生かすべきでしょう。
 

3.まとめ

  • 自院の医療コスト構成比率を把握する
  • 比率が高いものの要因を分析し本質的な課題をみつける
  • 医業コストの本質的な課題を解決するための事業計画をたてる

コスト削減というと光熱費や事務消耗品に過剰な反応を示している経営者が多いと耳にします(もちろん無駄とは言いません)。πが大きいものを把握して課題を整理する方がより効率的にコスト対策を行う事ができます。

病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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