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病院経営 虎の巻

虎の巻その12 病院の収入について(中)

虎の巻その12 病院の収入について(中)

1.はじめに

こんにちは。虎兄(とらにぃ)です。病院経営コラム「病院経営~虎の巻~」。前回は、病院の収入の現状を認識するために、収入構造をツリー分解してみることをお話しました(収入構造ツリーを再掲します)。今回は【患者数】を増やす、【診療単価】あげることを順番に見て行きましょう。

病院の収入構造

(図1)病院の収入構造

2.【患者数】を増やすために押えるべき3つの指標

【患者数】は大まかに3つの視点に分かれています。

①「動態的」な指標
集患力、患者プロセス、患者属性、病床の実態、平均在院日数、新規患者数、退院患者数など。

②「静態的」な指標
病床利用率、稼働率、延患者数など。収益と直結しているとみて良いです。

③患者フロー
自院直接、紹介、救急があり、新しく入ってくる患者の増減率と、発生のルート、入院の集患効率を重視します。

患者フローおよび、入院発生率から導く患者数

(図2)患者フローおよび、入院発生率から導く患者数

 (図2)のように、外来、入院の患者獲得のルートで、入院の発生率がわかります。これらを把握することによって、入院患者数を獲得するためには、どのルートの効率が良いのか一目瞭然になります。
あくまでも理論値となりますが、1名の入院患者を獲得するために、外来で受け入れる患者は何名必要か、ということがわかります。効率が最も良いルートを強化していくのか、そのルートのキャパシティはどうなっているのか、それらを強化するのには投資が必要なのか、など様々な検証材料が上がってきます。

これらをふまえて病棟種別、診療科毎に指標がとれれば分析と対策は立てていきます。さらにその単位あたりを指標化、年次ごとに動向をみることが必要です。

3.診療単価の増加

続いて収入のもう一つの柱である【診療単価】を上げるためにどうすればよいのでしょうか。
こちらは出来高項目の算定がメインとなります。リハビリテーションや検査数を増加させたい場合の目標値の立て方についてご紹介します。
検査・治療機器・手術設備、リハビリテーション施設、健診施設等の「施設効率」を分析する上でも非常に大切です。施設効率では患者数との視点の相関、MAXキャパシティと稼働状況を把握します。キャパシティは機器・設備の物理的限界稼働とマンパワー的限界で数値化できます。

疾患別リハビリテーションで例えてみましょう。
施設基準は以下の通り、キャパシティを把握しなければいけません。

<スペース要件>
「治療・訓練を十分実施し得る専用の機能訓練室(少なくとも、病院については内法による測定で100平方メートル以上、診療所については内法による測定で45平方メートル以上) を有していること。専用の機能訓練室は、当該療法を実施する時間帯以外の時間帯において、他の用途に使用することは差し支えない。」

他の疾患別リハビリテーションと同一時間帯に使用する事は差し支え無いとされていますが、想定する患者数に見合ったスペースが確保されているかも重要です。
例えばADL(日常生活動作:Activities of Daily Living)が下がっている患者へのベッドサイドでのリハビリテーションが多ければ100平方メートルをギリギリ超えたくらいでも良いですが、機能回復目的のパワーリハビリテーションが多い場合は、実施できる単位数に制限がかかる事があります。

<人員要件>
「専従の常勤理学療法士又は専従の常勤作業療法士が合わせて4名以上勤務していること。」

地域包括ケアの専従と兼務できない、他の疾患別リハビリテーションと兼任が可能など要件はありますが、こちらも患者数の実態に沿った人員配置が必要です。

(前提条件)

A.患者あたりの1日実施単位数は6.7単位

B.セラピスト1名あたりの1日実施単位数は18単位

C.対象患者は40床を想定

先ず、1ヶ月の実施予定の単位数を把握します。A×B×30日は8,040単位になります。
次にこの単位数に対して必要な人員数を割り出します。
セラピスト1名あたりの実施単位数はB×勤務日数(21日)で378単位となり、8,040単位を378単位を除すると40床の回復期リハビリテーション病棟を運用するにはおおよそ21名の人員配置が必要になります。

もちろん他の疾患別リハビリテーションの兼ね合いで、PT(理学療法士:Physical Therapist)/OT(作業療法士:Occupational Therapist)/ST(言語聴覚士:Speech-Language-Hearing Therapist)の割合はバランスを取る必要があります。

以上のように、疾患別リハビリテーションの提供単位数をあげる為に、単に実施件数をあげるのではなく、「前提条件」=「目標値」を定めてキャパシティを把握した上での実態を可視化することが重要です。

4.【患者数】と【診療単価】を同時に増加する~在院日数と単価、患者数の関係

入院において【診療単価】と【患者数】を同時に増加する方法としては、在院日数を短縮させ病床回転率を上げること、があります。入院基本料には初期加算がありますから、在院日数が少ない患者数の占める割合が大きいほど、診療単価は増加します。
しかしながら、患者を早く退院させるのですから、並行して入院患者の増加、を果たせなければいけないと言うことになります。集患力の増加が必須で、そのために救急や外部連携の強化などが必要となってきます。ただし、人員強化や設備の投資が必要な場合があるということを忘れてはいけません。

(図3)で在院日数と単価、患者数の関係を表しました。先ほど説明した通り、患者が病院にいる日数が長くなればなるほど、1日にもらえる診療費は下がってきます。在院日数を短くすることにより、患者1名当たりの総収入は減少しますが、1日単価は上昇します。
短縮前、50日入院していた場合、患者当たりの収入は120万円、1日当たりの診療費は24,000円。短縮後、在院日数25日、総収入は75万円ですが1日当たりの診療費は30,000円と以前より増加します。

ここで重要なのは、 「一か月でこの一つのベッドを何人使用できるか」です。短縮前は1人、短縮後は1.2人となります。

在院日数と単価、患者数の関係の例

(図3)在院日数と単価、患者数の関係の例

 続いて、(図4)は年間で見た場合です。
短縮する前は年間で1ベッド7.5人しか使用できません。短縮後、平均在院日数が25日の場合は1年で15人ベッドを利用できます。このように在院日数を短縮=ベッドの回転率を上げることで、収入が年間2百万円強違います。これが、10ベッドあったとしたらどうでしょう。年間2千万円の違いです。
ただし、注意するのは患者数の増加が絶対条件と言うことです。増患が伴わない在院日数短縮は病床利用率の悪化を招くだけとなります。

年間でみる在院日数と単価、患者数の関係の例

(図4)年間でみる在院日数と単価、患者数の関係の例

5.まとめ

  • 【患者数】を増やすために①「動態的」な指標/②「静態的」な指標/③患者フローの3つの視点から検討する
  • 【診療単価】をあげるために、現在の稼働率を可視化し、出来高項目の増加につなげていく
  • 入院患者の在院日数を短縮させ、病床回転率をあげることで【患者数】と【診療単価】を同時に増加さることができる

次回は、経営改革への応用についてご紹介します。
病院経営~虎の巻~」、次回もお楽しみに!

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