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キャピタルメディカ STORIES

「Healthcare Venture Knot」イベントレポート④ ~パネルディスカッション 【患者にとって最も適切な治療とは】 編~

こんにちは、キャピタルメディカです。

『Healthcare Venture Knot』イベントレポートも最後となります。
パネルディスカッション後半編、さっそくご紹介しましょう。

 

パネルディスカッション【患者にとって最も適切な治療とは~AIはがん治療を大きくかえるのか~】 ※敬称略

◎登壇者

当事者:難波 美智代 (一般社団法人シンクパール 代表理事)
スタートアップ:沖山 翔(アイリス株式会社 代表取締役CEO 医師)
医療者:柴田 綾子(淀川キリスト教病院 産婦人科医)
モデレーター:裵 英洙 (ハイズ株式会社代表取締役社長 医師・医学博士)

 

難波さんは2009年に受けた検診で子宮頸がんが見つかり、それをきっかけに子宮頸がんを啓発するNPO法人を設立されました。

難波:
「これまで出産以外に入院したこともなかったので突然のがん告知を受け本当にショックで。病気について何も知らなかったですし3歳の息子の子育て真っ最中で仕事もしていたので、全てを失うのかと気が動転しました。そのような心境のなか病気について調べてみると今度は情報が多すぎて取捨選択できなくて。信頼できる医師の方に“翻訳”してもらったけれど2、3割しか理解できていなかったと思います。そもそも今まで女性のがんについての教育を受けてこなかったのだから同じ思いをしている女性は多いはずで、当時女性向けのPRやイベントを行う会社を経営していたこともあり、発信することなら自分でもできるかもと、『シンクパール』立ち上げへとつながりました。」

 

「ラッコの妊娠相談室」という妊娠や性に関する無料相談をLINEボットで運営している柴田先生も啓発の大切さを実感しているそうです。

柴田:
「現状、子宮頸がんは医療者しか検査ができないので来院しないことには発見できません。ですので啓発活動が果たす役割は大きいです。いまアメリカやアジアなどでは“nurse practitioners”という看護師が検診や診断まで行う制度があって日本でも導入に向けて検討を始めています。まだ医師が行うより精度が低く見落としリスクなどの課題はありますが、AI診断と併用することで精度があがり、将来的にはがん検診がより身近なものになるのではないかと期待しています。」

 

日本赤十字社医療センターでの救命救急やドクターヘリ添乗医などの経験を経て2017年 アイリス株式会社を創業、AI医療機器の研究開発を行う沖山さんはAI診断の現状について紹介しました。

沖山:
「ディープラーニングを活用した医療画像のAI診断はだいぶ進んでいて、専門家よりも高い精度で診断できるようになっています。もちろん人間の診断よりスピードは早いですし、24時間休みなく稼働できます。とはいえこれは研究課程の話で、まだ一般的に普及しているプロダクトは無いのが現状です。」

 

今後ますます発展するであろうAI診断について当事者や医療者はどのように考えているかと問われると

 

難波:
「診断のプロセスとしてAIが使用されることにあまり抵抗はないです。どちらかというとその後の医師の告知の仕方のほうが気になります。がんの当事者として一番安心したのは家族や友人の手のぬくもりだったり心温まる交流でした。テクノロジーの進化が医療者と当事者の交流を深める一助になればと思います。」

柴田:
「がんは早期治療が有効なので、早く診断するためにAIに頼れる部分はまかせて、告知や患者ケアの時間に充てられるならどんどん活用したいと思います。我々医療者は患者の現状を伝えることはできるのですが、5年・10年後にどうなっているかという予測は経験に頼る部分が大きく、はっきり伝えられないこともあります。AIを活用することで未来予測がつきやすくなり、患者の生活やキャリアプラン形成にも役立つのではないでしょうか。」

沖山:
「AIは情報の整理整頓は得意なので、医療者が患者に向き合う時間の捻出につながると思います。ただその先の判断は人間の領域です。例えば乗換案内アプリで情報を複数提示した際、時短を重視するのか、コストを重視するのかはAIでは判断できません。それと同じようにAI診断でも副作用がないこと、医療費が抑えられること、ハイリスクでも根治を目指すこと、これらを判断するのは人間であり、医療者が患者や家族と信頼関係を深められる”空気づくり”といった人間性を磨くことは引き続き大切だと思います。」

 

続いてがん検診の受診率向上に向けてのそれぞれの取り組みを伺った。

 

難波:
「シンクパールにいる20代のインターン達に、なぜ検診に行かないのか尋ねると“何処に行けばいいかわからない”、“いくらかかるかわからない”、“何をされるかわからない”と返ってきます。インターネットネイティブな彼女達なら検索すればすぐわかるはずですが、結局自分事になっていないと感じます。女性達に自分事だと思ってもらうために国とも様々な取り組みをしています。厚生労働省だけではなく、文部科学省とがん教育について検討したり、経済産業省と健康経営推進の一環として女性の健康課題解決を支援したりと多角的にアプローチしています。」

柴田:
「自分事にするために妊活の一環などに組み込まれればよいと思います。とはいえ、婦人科検診はとくにハードルが高い。産婦人科医である自分でもなかなかあの診察台にあがれませんでした。病院に行かなくても自己検診ができるようなものが技術革新で実現できればと思います。医療現場はまだまだユーザーフレンドリーとはいえません。デザインやヘルステックの力によりユーザーフレンドリ―になるのを医療者としてサポートしたいと思っています。」

沖山:
「アメリカで“preventive police(予測警備)”という取り組みがあるのですが、AIが犯罪が起きると予測した箇所を重点的にパトロールするだけ4割犯罪が減ったという例があります。個人ががんになる予測は出せませんが、年齢や生活習慣の同じ条件の人が将来がんになる確率ならAIで出せると思います。それを開示することでがん検診受診率向上に繋がるかもしれません。
テクノロジーの面でいえばロボティクスが担う役割もあるのではないかと思います。介護もそうですが人ではなく高性能のロボットにケアされるほうが精神的負担が少ないということもありえます。人が介在しないがん検診が今後できるかもしれません。」

 

最後に、モデレーターの裵さんが
「ヘルスケアのテクノロジーは“あったらいいな”というものではなく、“なくてはならない”もの。本当に社会が必要としているサービスを提供できれば患者も医療者も皆がハッピーになります。そのようなヘルスケアビジネスを世の中に作りだしていってほしいです。」

とヘルスケアビジネスに従事されているオーディエンスの皆さんへエールをお伝えしてパネルディスカッションは終了しました。

登壇者の皆さん、ありがとうございました。

 

以上のような、盛沢山の内容で行われた『Healthcare Venture Knot』。

会場には約200名の方にご来場いただき、盛会のうちにイベントは終了しました!

ゲンバからは以上です。

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