先進国の医療提供体制

イギリスの医療提供体制

国営と民営の医療提供体制が混在するイギリス

 イギリスの医療提供者は医療費が国の負担となる国営のNational Health Service(以下NHS)と全額患者負担となるPrivateとに二分される。また、イギリス国籍を持つものは地域のGeneral Practitioner(以下GP)に必ず登録することになっている。体調に不安を感じた場合には、まずはGPを受診し、そこで紹介されたNHSでの受診をすることとなる。GPには内科、眼科の区別はなく、いかなる症状でも登録したGPで受診をしなければならない。
 また、患者に医療機関を選ぶ自由がないにもかかわらず、GPには登録患者の抹消、診療拒否の権利が認められている。下記のNHSでの受診状況を見ても患者にとって安心して医療を受けられる体制が整っている状況とはいい難い。

総合病院の外来を受診できるまでの待機期間 16週間
医師が必要を認めてから入院できる患者の割合 71%
1年以上手術待ちをしている患者数 46,000
他のヨーロッパ諸国で手術を受ける患者数 1000人/年
救急外来の待ち時間 4時間
出典:UK contemplates sending patients abroad. Lancet 358: 819, 2001

アメリカで生じる医療格差

 アメリカには公的保険制度がない。低所得者および身体障害者に対してはメディケア・メディケイドという制度があるが、対象者以外は民間保険を利用するほかない。結果健康状態や経済的な理由で4,000万人が保険を利用できないでいる。保険の有無、所得の高低により受けられる医療の内容は明らかに異なることが想像できる。
 マンハッタンにおける一般的な初診料は150〜300ドルであり、専門医を受診すると200〜500ドル、入院の際の室料は2,000〜3,000ドルにもおよぶ。 日本に比べ医療従事者が多く手厚い看護を受けられるという声もあるが、その反面高額な医療費を患者が負担しているという実態がある。

OECD諸国の医療額GDP比率(単位:%)
OECD諸国の医療額GDP比率(単位:%)
出典:OECD Health Data 2007
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人口千人あたり医師数・看護師数のOECD諸国比較
人口千人あたり医師数・看護師数のOECD諸国比較
出典:OECD Health Data 2007
(注)オランダ、ルクセンブルグ、ハンガリー、日本は2004年のデータ
参考:外務省渡航関連情報
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高額医療費が引き起こすメディカルツーリズムの実態

 近年欧米諸国では、同等の水準の先進・高度医療が自国よりもはるかに安価に受けられることから、アジア諸国で手術や治療を受けることを目的としたツアーが増加している。2006年には医療サービスの提供を目的にアジア諸国を訪れた外国人旅行者は180万人、その市場規模は約68億ドルに及んでいる。
 医療費が高額である欧米諸国においては、企業が負担する医療費がアジア諸国において治療を受けることにより、約80%軽減されるといわれている。そのような状況を背景にアジア諸国での受診を推進する企業が増加の傾向にある。
 また、シンガポールにおいては国を挙げてSingapore Medicine構想を打ち出し外国人患者の受け入れを推進する動きがある。具体的には、国と医療業界が一体となり、保健医療産業への新規投資や外国人患者の移送経路の整備を行っており、2000年から2005年の患者受入数は15万人から37万人へと倍以上増加している。

参考:経済産業省「平成19年版通商白書」